十二単の美学 〜装束の研究〜

十二単は12枚という意味ではない?!〜装束の研究 〜 」に引き続き、十二単研修でのことをメモしておきます。

昔の着物は今その時の季節と同化させるファッションだった?!


朝起きて、ハラハラと舞う雪が咲き始めた梅にかかり、「ああ、せっかく咲いたのに散りはしないだろうか」と思うとする。そして、その日に着る服には、梅を寿ぎ、自然を愛しむ心を添える。 表地が白で、裏地が紅梅色の衣装。この襲の色目を『雪の下』というそうです。ああなんてロマンチック!!

今の着物は季節先取りで身に付けるのがかっこいいとされていますが、今を謳歌するのも美しいですね。

襲の色目は3種類

四季がはっきりしている土地柄、日本人は昔から自然を愛しむ色彩感覚に長けていました。その代表的感覚が、襲の色目。色を重ねたり、グラデーションを作ったりしながら自然界の色を身につけてそのパワーや尊さを教養としても表現していたなんて、世界に類を見ない素晴らしい能力だと感じます。この襲の色目には3種類あるそうです!

表裏の襲の色目

冒頭でお伝えしたような、表地と裏地の色の組み合わせで季節の草花を表現する色彩感覚。

グラデーションの襲の色目 〜匂いと薄様〜

色彩のグラデーションになるように5衣を次々に重ねてまとう色彩感覚。濃い色から外側に着る衣に向けて薄くなる重ね方を『匂』、濃い色から薄い色、そして白になるように重ねることを『薄様』というそうです。今回の研修で見せてくださったのは、『萌黄の匂』というグラデーションの襲。

萌黄の匂い 十二単

深緑と常盤色→草色と若竹色→萌黄色と若草色→若芽色と
色と玉子色のようにだんだんと薄くなっていく黄緑色の美しいこと❗️ 昔の絹は今の大きさよりも三分の一ほどの大きさしかなく糸も細かったため、衣も透き通るように薄かったとか。そのため、動くたびに光の加減で様々な色が反射されて、まるで草木に風が当たり様々な表情を見せる自然美のような姿だったとか。
織の襲の色目 玉虫色の美

一番上に羽織る唐衣は、経糸と緯糸の色を変えて地紋の上に他の文様が浮き出るように織られていて、玉虫色が現れていたそうです。このように自然な色彩感覚を身につけることで、心の安らぎ、和を尊んでいた私達。日本人の誇れる感覚として世界平和にも繋げられるのではないかとさえ思えてくるのは私だけでしょうか。

着物を5〜6枚近く着るのに紐はなんと一本!

一枚一枚重ねていく着物の総重量は16〜17キロ。かなり重く重ねているのにもかかわらず、使っている紐はたった一本だった事に驚きました。衿を重ねて前でヒダを取り、手で押さえながら紐で留め、また上に違う着物を紐で留めたら、下の紐は取っていく…。この繰り返しでした。

十二単の衿の重ね方は二通り。てんで前と一つ前だそうです。てんで前は次々に重ねていくのに対して、一つ前は現在の比翼仕立ての様な合わせ方。現在の皇室では、重さで動けなくなる事がないように着物は一枚で衿の重ねだけ比翼仕立てになっているとか。その為に皇室に習って現在の十二単着の衿はすべてこの一つ前で合わせるそう。

十二単の衿合わせ

衿を斜めに合わせながら、腰紐から下は真っ直ぐに下ろすというのは技術を要するそうです。前のお腹側でサイドにヒダを取り、大きく仕立ててある装束の巾をモデルによって変動させ、また動作がしやすいようにゆとりを取る。といっても、十二単は立って歩くことを想定して作られていないとか。お付きの方が全てするからでしょうが、凄い発想と文化ですよね〜。

袴は前が無い、半分だけの巻きスカート!


スカート状の袴を着ようとしたところ、着れないし動けなくなるから前がどんどんあいて後ろだけになったと八條先生は面白可笑しく話してくださいましたが、どうして後ろだけは残そうとなったのか、興味が湧いてきます。いっそとっちゃえばって思っちゃったけど(笑) そういう次元の美学ではないか(汗

 

綺陽装束研究所 主宰 八條忠基先生
主な著書「素晴らしい装束の世界
ひろく現代人の生活に活用するための活動をされている。
装束勉強会・着装体験は、早稲田にある研修所でできるそう。
私も改めて勉強しに行きたいと思いまーす。

キモノワールドライフ
パーソナル着物スタイリング
齋藤優見

 

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キモノワールドライフ 七五三スタイリング着付け撮影 相模原市
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前回記事「十二単は12枚という意味ではない?!〜装束の研究 〜」はこちらからどうぞ。